『感染症の日本史』で温故知新を改めて思い知る。
残暑が厳しいざんしょ、という駄洒落で寒さを覚える頃合いになりましたね。
今、コロナウイルスが過去最大の流行を迎えており、毎日のように過去最多の文字や音声を目に耳にするようになってしまいました。
そんな中で私が読んだ本を紹介します。
『感染症の日本史』
磯田道史 著
文藝春秋社 文春新書1279
NDC(10版):493.8(内科学)
2020年9月初版
ほぼ一年前に発売された本なので、現在のデータと情報に差があります。2020年9月といえば、新型コロナウイルスの流行第二波が日本を襲い始めた頃です。しかし、本書は1918年から世界的に流行した、スペイン風邪(今でいうインフルエンザの仲間だそうですね)をメインに、過去流行した様々な感染症の記録から現在のコロナ禍を見つめるという点に重点を置いているので多少タイムラグがあろうとも今の状況を考えるための方針を示してもらえる良著だと思います。
実際に読んでみると、天然痘やコレラの流行にあたって江戸や某藩の施策は「今これが行われないから経済的に困窮する人や食事もままならないなんて人が多いのでは?」と思わされるような資料が出てきたり、日本で○万人が感染、○ヶ月で感染者が○倍になったというマクロな視点の資料だけでなく、その時を生きてきた少女の日常を綴った日記というミクロな視点の資料にも焦点を当てたりして歴史上の感染症への対策をあらゆる視点から見つめて書かれている本でした。
高校時代の恩師の座右の銘が『温故知新』でした。古きを温(たず)ね、新しきを知る。昔の文献などを調べることで、そこから新しい事を学ぶという意味の四字熟語です。この本を読んで、その言葉が胸の中に現実感を伴った重みとして残りました。
過去の感染症の記録を読み込む事で、今の私にも得られるものがあるのだと感じます。
……全く話は変わりますが、私、磯田先生大好きなんですよね。先生が司会をしている『英雄たちの選択』(NHK BSプレミアム)で、様々な時代の英雄と呼べる人を一人ピックアップして、その人の研究を行っている人達をゲストとして招き、英雄の生涯に沿って様々な事件が起きた時に彼もしくは彼女が取った選択についてトークしていくんですが、研究者達の話を聞いている磯田先生がいつもすごーく楽しそうなんです。
そういう、自分が好きな事を心の底から楽しめる大人ってとても輝いていますよね。私の磯田先生好き度は最早ファンの域に達しています。同じくファンの域に達するほど好きなのはサッカー解説者の松木安太郎さんです。松木さん、解説者というか、一緒にサッカー日本代表を応援しているサッカー大好きおじさん的な存在で親しみを持てます。
そんな勢いで好きな磯田先生の本を読みたいと思い立ち書店に赴いて買ってきた本です。
平易な表現で学生にも分かりやすい。読書感想文とか書けるんじゃないかな。…と夏休みも終わりかけの今言ってみました。
読書感想文の自由図書部門に応募しようとする学生さんはやっぱり自分の一番好きな本で書くべきですよ。課題図書を読むのも勿論いいんですけど、『課題』図書ってされるとどうしても「やらされてる感」があるじゃないですか。ああいう読ませ方をするのが読書嫌い、作文嫌いを生む遠因になってるんじゃないのかしらと常々思っております。課題図書を読んで、この本好き!ってなったらそれで十分なんですよ。その熱意を作文用紙にぶつけましょう。大丈夫、本の感想をツイートするような感覚でいけばいいんです。好きじゃないけど課題図書だし……って読むのは心によくない。よくないですよ!!
この本はこういう本で……みたいなブックトークで、学生さんたちの心に「読んでみたい」欲を生み出せるように精進したいです。
でも、探せばきっとあるんじゃないかな、課題図書のブックトーク動画みたいなの。
話が大変ずれましたが、良い本に巡り会えました。
次に読みたい本
『無私の日本人』 磯田道史著(一節を原作に、映画『殿!利息でござる!』が制作された)