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本やゲームの感想を書いています

想像力を無限大にして読む本『ものがたりの家』

小さい頃、マッチ箱だか何だかに住むこびとの話が好きだったんですよ。記憶が朧げで書名も思い出せないし、本当にマッチ箱に住んでいたかも分からないんですが、そういうのが好きでした。

あと、知ってる人は知ってるけど知らない人はおそらく本当に知らないエンジェルポケットというおもちゃも大好きでした。あれも家の間取りみたいなのが見えて楽しいんですよね。

間取りというか、間取り+置いてあるものというか……そこから住人の物語を想像するのが楽しかったんです。

 

という訳で、今回はそんな子供の頃の気分を思い出させてくれた本の感想を書きたいと思います。

 

『ものがたりの家──吉田誠治 美術設定集』

吉田誠治 著

パイ・インターナショナル 刊

ISBN:978-4-7562-5358-3

NDC(10版):726.5

※普段ここに書いてあるNDCは国会図書館のデータを見て記載しておりますが、この本はデータが見つからなかったので公共図書館10館と手元のNDC10版の本表・補助表編を参考にして記載しております。

 

背景グラフィッカーである吉田誠治氏がコミケで出していた『ものがたりの家』(2冊あったそうです)掲載の全作品と描き下ろしやコラムやメイキングもぎゅっと詰まっている「決定版!!」(帯より)らしい。私は以前紹介したすれ違い通信系本おすすめアプリ「taknal」で初めて知り、興味を持って購入しました。

コミケには何度か足を運んだ事がありますが、オリジナルエリアってこういう素晴らしい本があったりするから楽しいんですよね。この本の元になる同人誌版『ものがたりの家』にはお会いできなかった訳ですが。

今度行く時は全力で私の好みの本を探し回りたいです。はあ、早くコロナが落ち着いて、以前のように安心してコミケに参加したいものです。

 

この本はいくつかの設定に基いて描かれた家の外観や断面図(こう、絵をズバッと斜めとかに切ってあるやつ……正式名称を知らない…)や、間取り図だけでなく、書いてある注釈的な文からその家が建っている世界の想像がブワッと広がっていきます。その家の住人のストーリーを想像する楽しみ方も出来るので本を開く度に何度も想像力を掻き立てられるワクワクが味わえます。

また、背景グラフィッカーという仕事柄なのか、吉田誠治氏ご自身の趣味も兼ねているのか、屋根の種類やらトイレの歴史やら、作品に対するこだわりのポイントをコラムにして仕上げてあるので読むだけで物知りになれた気がしました。ローマと江戸すごい。

 

一度読み終えても時間ができる度に開き、一軒ずつじっくり眺めていると、その度に新しい発見があったり最初に想像したのと別の物語が頭の中に広がったりと一冊で何回でも楽しい思いができる素晴らしい本です。

物語を書く方や想像の世界に旅行するのが好きな方は是非お手に取ってください。ホントに何度でも楽しめますから。本当ですよ。

 

ちなみに私が好きな家は「寡黙な整備士の別荘」と「偏執的な植物学者の研究室」です。そこから壮大な物語が展開する、というより、その家に暮らす人の何でもない当たり前の一日を想像するのが楽しいタイプの家だと思っています。